自閉症スペクトラム障害(ASD)まとめ

PTSD、トラウマ

自閉症スペクトラム障害(ASD)とは

神経発達症群(発達障害)のひとつで、相互的な社会的コミュニケーションや対人的相互反応の障害や言語に関する症状のほか、限定的かつ反復的な行動・興味・活動など様々な症状や対人関係の困難を包括した連続体(スペクトラム)とした総称。DSM-5では、典型的な自閉性障害(自閉症)だけでなく、広汎性発達障害であるアスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害、もっと軽い状態も含まれる。
ASDは、英名である「Autism Spectrum Disorder」の頭文字である。

ASDの診断基準は

  • 社会的コミュニケーションの障害
  • 限定された興味

の2つの要件を満たすものと定義されている。
2016年に出版された『カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5診断基準の臨床への展開』 (3版)によると、有病率は0.65~1%、生後2年以内に発覚することが多い。子どものうちに発覚するASD患者のうち、30%は知的障害を、11~39%はてんかんを併発している。
男女比は圧倒的に男性の方が多く、男性は女性の4倍と言われている。

DSM-5では、「幼児期早期から認められ、日々の活動を制限または障害する」と定義されている。
症状は、小児期早期や学童期早期に最も顕著であることが多いといわれる。小児期後期には特定の特徴が顕著になるが、思春期には一部は改善していく場合も多い。
ただし、本人の社会へ適応しようという努力や知的レベルの特性によっては表面化しづらく、気づかれないあるいは自己認識できないケースもあり、適応障害やうつ病など別の精神症状によって受診した後に、発達障害が発覚することもある。

不安障害・気分障害との併存率も高く、二次障害を患うケースも多い。

自閉症スペクトラム(ASD)に分類される障害

DSM-5で自閉症スペクトラムに定義された主たる障害のDSM-5以前での障害名は以下のとおり。

  • 早期幼児自閉症
  • 小児自閉症
  • カナー型自閉症
  • 高機能自閉症
  • 非定型自閉症
  • 特定不能の広汎性発達障害
  • アスペルガー障害

これらの障害には明確な境界線はなく、年齢や環境によっても重症度が変化したり、複数の障害が重複したりする。

DSM-5における自閉症スペクトラム(ASD)の診断基準

DSM-5では、次の5項目の診断基準が定義されている。

  1. 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥があり、現時点または病歴によって、以下により明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。
    1) 相互の対人的・情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやりとりのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ。
    2) 対人的相互反応で非言語コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりの悪い言語的・非言語的コミュニケーションから、視線を合わせることと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。
    3) 人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、様々な社会的状況に合った行動に調整することの困難さから、想像上の遊びを他人と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。
  2. 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式で、現在または病歴によって、以下の少なくとも2つにより明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)
    1) 常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動、反響言語、独特な言い回し)。
    2) 同一性への固執、習慣へのかたくななこだわり、または言語的・非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)
    3) 強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭、過度に限定・固執した興味)
    4) 感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音、感覚に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)
  3. 症状は発達早期に存在していなければならない(しかし社会的要求が能力の限界を超えるまで症状は明らかにならないかもしれないし、その後の生活で学んだ対応の仕方によって隠されている場合もある)。
  4. その症状は、社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている。
  5. これらの障害は、知的能力障害(知的発達症)または全般的発達遅延ではうまく説明できない。知的能力障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり、自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには、社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより下回っていなければならない。

参照:https://www.psychiatry.org/psychiatrists/practice/dsm

自閉症スペクトラム(ASD)の特徴

  • 社会的コミュニケーションが困難。
  • 他人と目を合わさない。
  • 相手や状況に合わせることができない。
  • たとえ話やジョークなど言葉の深い意味を理解しづらい。文字通りに受け取る。
  • 難しい表現や言語をあえて使う。
  • 代名詞の指す意味の置き換えが難しい。
  • 柔軟な考え方をしづらい。
  • 決まった手順やルーティンにこだわる。
  • 融通が利かない。臨機応変な対応が苦手。
  • 感覚過敏や感覚鈍麻がある。

自閉症スペクトラム(ASD)の原因

現在、先天的な脳機能の変異とされ、子育てによる要因は関係しないといわれている。
1950~60年代は、「自閉症は親の育て方が原因で起こる後天的障害である」というのが定説であったが、現在は、先天的な脳機能障害であるといわれている。

大脳辺縁系、とくに扁桃体・小脳の異常、セロトニン系の機能障害、ミラーニューロンの機能障害、オキシトシンの障害、神経接合不全が考えられている。※「発達障害のいま」(杉山 登志郎著)

ただし虐待など小児期にトラウマ体験を遭った場合、ADHDやASDに似た症状を呈しやすくなることもわかっている。

自閉症スペクトラム(ASD)に併発しやすい障害・病気

  • 知的障害
  • PTSD
  • 学習障害(LD)
  • 注意欠陥・多動性障害(ADHD)
  • 気分障害・うつ病・双極性障害
  • 適応障害
  • 強迫性障害(OCD)
  • 統合失調症(SZ)
  • 睡眠障害
  • てんかん
  • 摂食障害

ミラーニューロンの異常

ミラーニューロン(Mirror neuron)とは

霊長類などの高等動物の脳内で、自ら行動する時と、他の個体が行動するのを見ている状態の、両方で活動電位を発生させる神経細胞である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ミラーニューロン

2006年、自閉症スペクトラムは、ミラーニューロンの機能に異常がみられることが確認された。
ミラーニューロンの機能障害は、社会性や共感能力、学習能力(失敗から学ぶ力)に影響していると考えられる。

自閉症スペクトラム(ASD)の治療

一般的にASDには治療法は見つかっておらず、治療よりも療育や支援、環境調整に重点が置かれる。

治療のゴールは、関連症状を最小化し、患者の生活面の工夫をして生活環境を整え、患者家族のストレスを軽減することを目標とするのがほとんどである。

思春期以前に自閉症スペクトラムと診断され、治療を受けている場合は、抱えている問題症状への対処法をある程度身につけている場合もある。しかし、ストレスを感じたり、発覚されずに二次障害による問題を抱えている場合も多い。

ストレスや精神症状に対してはカウンセリング、生活習慣の改善にはソーシャルスキルトレーニング、特定の考えに固執する・癇癪の軽減には認知行動療法などの行動療法、対人関係療法な、二次障害や問題となる思考や行動に対して、適宜薬物療法や精神療法を取り入れる。

PTSDを原因とする発達性トラウマの場合は、自閉スペクトラム症の要素の程度や発達特性の達成度合いをアセスメント(評価)した後、トラウマ治療などを検討していく。

参照:
https://snabi.jp/article/34
https://ipt-clinic.com/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%81%AE%E7%9B%B8%E8%AB%87%E3%83%BB%E6%B2%BB%E7%99%82

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